本日はセミナー講師として呼んでいただいたため、支店にて相続税・贈与税に関するセミナーをさせて頂きました。
その際に頂いた質問について、
『贈与税の申告をきちんと行っていても相続税の調査時に名義預金になる可能性があるのか?
可能性がある場合には贈与税の申告をきちんと行っているのにおかしいのでは?何のための申告なのか?』
といったものでした。
確かにおっしゃるとおりですし、気持ちはすごくよく分かります。しかし、名義預金に関する調査は厳しく、結論からいうと、例え贈与税の申告を行っていても名義預金として認定される場合はあります。
これは過去の裁決事例などからも明らかです。
裁決では、そもそも、贈与税の申告は、確定税額を計算し、申告をすることであり、贈与税の申告のみをもって贈与の事実を立証するものではないと捉えているのです。つまり、贈与という法律行為自体の成立とは直接的関係はないというわけです。
ですから、贈与税の申告書を提出することだけをもって贈与の事実を立証することは出来ず、実質的な資金管理を行っているのは誰であるかなど、総合的に判断を行うとされているのです。
また、名義預金で問題になるのは、子や孫ばかりではありません。
配偶者も対象となります。
例えば、生活費を妻に渡し、余った資金を妻名義にしているケースは多いと思います。口座名義も変わっている以上、一般的には妻のお金であるとは思いますし、管理しているのは妻である以上、社会通念上も妻のものという認識かと思います。
しかし、裁決事例を確認してみると、資金管理は配偶者が行うことが一般的であり、管理を行っていただけでは贈与は成立しないというのが基本スタンスです。つまり、コツコツ貯めたお金の出所は夫である以上、夫のものであるとされているわけです。これを避けるためには、管理のみだけでは足りず、贈与契約書や贈与税の申告書などにより贈与事実を積み重ねる必要があります。この場合にも総合的な判断が要求されます。