不動産賃貸業を行っている方にとって大規模修繕は定期的にまとまったお金が出ていくため、出来れば平準化したいところだと思います。
2022年4月から「賃貸住宅修繕共済」が開始され、大規模修繕の平準化に期待がよせられています。
まだまだ始まったばかりの制度のため全容は明らかになっていませんが、明らかになっている内容に基づきお客様と検討したことを会話形式でご紹介します。
賃貸住宅修繕共済の特徴
業界初といわれている共済制度ですが以下のような特徴があります。
- 共済掛金は全額必要経費・損金算入が可能になる。
- 共済の対象は外壁・屋根・軒裏に限定。
- 共済掛金は掛け捨て(途中解約でも返戻なし)
- 加入する際、長期修繕計画書(組合所定のもの)を提出する必要あり
- 対象物件にすでに劣化事象がある場合には予め修繕後でなければ加入不可
- 加入後は毎年、建物検査を受ける必要あり
- 定期点検により共済対象の劣化事象が発生し一定の要件を満たす場合に未経過共済掛金を限度に共済金が支払われる。
- 共済金は直接、代理店が指定する業者へ支払われる。
賃貸住宅修繕共済についてのお客様との会話
相談者Aさん
アパート3棟所有。通常時の不動産所得は600万円程度。
業界紙で「賃貸住宅修繕共済」が話題になっています。私が所有する物件も大規模修繕は今後さけて通れないことなので少し興味があります。何か情報はありますか?
令和4年4月から開始されているとのことですが、私自身はまだ加入した方から情報を得たわけではありませんので概要だけを理解している程度です。
まだ、始まったばかりですからね。私も概要だけは目を通したのですが良いところと使い勝手が悪そうなところがある制度だと感じています。
そうですね。
税務的な視点からいえば共済掛金が必要経費や損金になるところは非常に魅力的です。
特に個人事業主として賃貸経営を行っている場合には、大規模修繕を行った年度だけは所得税の低い税率と通算することになっていまうことが多く、この修繕費用を平準化出来ればトータルとしての税負担が軽減できるのでは?と期待しています。
ただ、大規模修繕を共済という形で毎年一定額支払っていくこととなるため資金繰りにゆとりがないと加入は難しいですね。
私の場合はそれほどキャッシュフローが厳しいわけではないので、大規模修繕の平準化による節税が出来れば良いかな?と思っていますが、税金以外のところ、掛捨となってしまうことや長期修繕計画の提出が必要など気になることが色々書かれていますが、そのあたりのことはどう考えますか?
Aさんのおっしゃる通り、気になる要件がいくつもありますね。
制度自体が分譲マンションの修繕積立金の必要経費算入要件を参考にして作られているようなので、一般の方ではハードルが高い修繕計画書の提出が要件だったり、建物の検査を毎年受ける必要があること、共済金が代理店の指定業者しか支払われないことが懸案事項だと考えています。
大規模修繕に関する囲い込みがされてしまっているような気になりますね。
制度の趣旨自体は非常に良いものだと思いますので、今後より一層使い勝手を良くしてもらえる期待したいですね。
そうですね。まだ、始まったばかりの制度のため、情報がもっと出てきてから検討したいと思います。