不動産賃貸業・投資の税務相続税申告・相続対策

親に支払う地代は必要経費に出来るのか?その他の問題点は?

地主さんからの相談で多いのが親の土地のうえに子供が建物を建てるケース。

この場合、安易に考えている方が多くいますが、一歩間違えると多額の税負担が発生するため注意が必要です。

以下では実際にあった相談事例を対話形式にてご紹介ます。

親の土地のうえに子供が建物を建てることとなった場合の相談事案

相談者:Aさん(母・60代前半)Bさん(長男・30代前半) 

土地 5000万円(母が所有者) 借地権割合70% 建物(アパート)を建築予定

Bさん
Bさん

母が所有している土地を駐車場として貸しているのですが固定資産税程度にしかならないため、駐車場をやめてその土地のうえにアパートを建てる予定です。

Aさん
Aさん

私はその土地以外にも夫が残した自宅や金融資産がありますし、夫の遺族年金もありますので、今後の生活は心配はありません。アパート経営はやったこともないですし、煩わしいのも嫌なので、相続税対策も兼ねて、アパートの名義は息子にしようかと考えていますが問題はありますか?

ひらい
ひらい

そうですか。

相続税対策としては一般的には被相続人となる予定の方が建物を建築し、土地の評価減及び建物の固定資産税評価額とローンの差額を相続財産の圧縮に利用する方法がとられます。

ただ、被相続人となる方がまだ若い場合には固定資産税評価額とローンとの差額及び土地の評価減以上にアパート収入による財産形成が進んでしまい相続税対策にならないことも少なくありません。

Aさんとのところは財産の総額から考えられる相続税の金額とAさんがまだまだお若いことも考慮すると相続税対策よりもAさんを煩わしさから解放することに重点を置いたほうが良いのかも知れませんね。

そうですね。

うちの場合には相続税が発生してもそれほど多くはないですし、積極的に相続税対策をするというよりも土地の有効利用といった側面が強いです。

また、今後、私に子供の教育費などがかかってくるので不動産での利益を教育費に充てたいとも考えています。

本来は母の土地のため、母名義でアパートを建てたいところですが、母は今まで専業主婦だったこともあり、お金のやり取りが苦手ですし、ローンを組むことを嫌がっているのでアパート建築については私のほうでローンを組む予定です。

ただ、今までは駐車場収入が母に入っていたのに私がアパートを建ててしまうと、母の収入が少なくなってしまうことが気がかりです。

そのため、アパート建築後は母に地代を支払っていこうと考えています。

母への地代は経費にもなりそうですし・・・・

ひらい
ひらい

確かに今までは駐車場収入がありAさんの生活費の一部となっていましたので無くなってしまうと息子さんとしてはAさんの生活が不安ですね。

ただ、地代のやり取りは大きく2つの問題が発生します。

①AさんとBさんは同居しており、同一生計親族に該当していると考えられます。所得税法上は同一生計親族への支払いは原則必要経費とは認められません。

②地代が使用貸借程度であれば問題ありませんが、通常の賃貸借程度の地代となった場合には権利金相当額を支払うか、相当の地代(更地価格の6%)を支払わなければBさんはAさんより借地権の贈与を受けたものとされ多額の贈与税を支払う必要があります。

このケースの場合5000万円×70%=3500万円の贈与をBさんが受けたことになってしまうので1280万円の贈与税を支払う必要が生じてしまいます。

え!!

地代を母に払ってしまうとそんなことが起きてしまうんですか!?

ひらい
ひらい

AさんとBさんは親子なのであまり気にしないと思いますが、土地所有者がBさんで他人がそのうえに建物を建てるといったらどうしますか?

当然、土地の有効利用が出来なくなる分だけ高めの地代をもらうか、権利金を前もって払ってほしいといいませんか?

税務は親子であっても同様の考え方が前提としています。

それではどうすればいいのでしょうか?

ひらい
ひらい

個人法人間であれば「無償返還の届出」というものがあるのですが、個人間は提出できません。その代わり、個人間の場合には使用貸借取引というものが認められており、税務上は使用貸借であれば借地権は発生しないことになっています。

使用貸借の範囲はタダ~固定資産税相当額となります。つまりは貸したほうは利益がほぼない状態ということです。

なるほど。

地代のやり取りがなければ使用貸借となり、多額の贈与税が発生しないわけですね。

ただ、固定資産税は私が負担するとしても母の生活費が気になります。

何か良い知恵はありますか?

ひらい
ひらい

そうですね。

地代として支払ってしまうと問題ですから、今までAさんが支払っていた生活費の一部をご負担するなどしてAさんの生活費を軽くしてあげたら如何でしょうか?

それなら、私も今の生活が維持できますね。

いや~。

うっかり地代を支払っていたら大変な目にあうところでした。

事前に打ち合わせが出来てよかったです。

ひらい
ひらい

借地権の話は難しいので地代を設定する際は気を付けてください。

親子だと特に権利意識が希薄になるので注意が必要です。


越谷・草加の税理士 ひらい税理士事務所

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