毎年、4月は不動産投資を行っている方から法人成りのご相談を多く頂きます。
今年もここ2週間で不動産投資を行っている方から4件※のご相談を頂きました。
皆さん、確定申告を行い、そこで改めて法人成りを強く意識するようです。
そこで、今回は実務を通じて、税理士の私が感じている不動産投資の法人成りのメリットとデメリットについてご紹介したいと思います。
※ご相談内容としては主に以下のようなものが多いです。
- 法人を設立する際には株式会社か合同会社か
- 自分はそもそも法人化すべきか
- 設立する法人の資本金はいくらにすべきか
- 個人所有物件を法人へ移す方法について(建物だけか土地も含めて行うべきか)
- 代表者をだれにすべきか
- 法人化することによるメリットとデメリット
- 設立後の流れや税理士報酬について
- 相続税対策としての法人化 など。
不動産投資を法人化した場合の5つのメリット
個人で行っている不動産投資を法人化した場合には様々なメリットがあります。
以下では5つに絞りご紹介します。
1 減価償却の任意償却が可能となる
不動産投資はキャッシュフローと税金との闘いであることは、皆さんよくご存じかと思います。
そのコントロールで重要になってくることの1つが減価償却を上手に行っていくことです。
個人で不動産を所有している場合、減価償却は強制償却です。
しかし、法人では任意償却が可能となります。
法人成りをした場合には任意償却を利用できることによりいわゆるデッドクロスの状態になる時期をコントロールすることが出来ます。(築古の場合にはどうしても早めになってしまいますが・・・)
これは不動産投資特有の法人成りのメリットといえます。
2 欠損金の利用
個人事業主として青色申告をしている場合、純損失が生じた年度から3年間の繰越控除が可能です。
しかし、繰り越せる損失は不動産所得で発生した場合で、運悪く物件の譲渡で損失が生じた場合には繰越控除の対処とはなりません。
それに対し、法人の欠損金は10年間繰り越すことができます。
また、個人のように所得を分類しないため、物件の譲渡損についても欠損金として繰越控除の対象となってきます。
3 小規模企業共済や倒産防止共済の加入
節税の王道といっても過言ではない倒産防止共済や小規模企業共済。
お国が推奨するだけに節税商品としてはかなり優れています。
しかし、上記制度は法人役員や個人の専業大家であれば加入できますが、不動産投資を副業とするサラリーマン投資家は入ることが出来ません。
法人成りをし、役員になることにより加入することが出来るようになります。
ただし、注意点としていずれの制度も長期間積立を要するため、賃貸経営を拡大していこうと考えている方は自己資金と相談しながらといったところになります。
4 相続税対策
将来の相続税対策を検討する場合にも法人は有効です。
例えば、個人所有の物件を子供に移していこうと考えた場合には、登録免許税、不動産取得税、司法書士費用などが掛かります。
贈与税を気にして持ち分を少しずつ移転するとなると司法書士さんの費用も膨らんできます。
一方、法人で物件を所有している場合には、株式の贈与ということになります。
不動産取得税や登録免許税は不要ですし、株価の動向を見ながら贈与していく株数を検討することが可能です。また、非上場株価計算上、財産額が圧縮されることが多いため相続税対策としても有効です。
5 税率の差
皆さんご存知の通り、所得税の税率は累進税率です。
副業で不動産投資をしている方の多くは本業の給料が良い方が多く、この給料に不動産所得が乗ってしまうと税負担が重くなってしまいます。(築古物件などで一時的に節税が出来ても減価償却が終わった後は税負担が跳ね上がってしまいます。)
不動産事業を拡大していこうと考えている方にとってもこの考えは非常に重要です。
金融機関からの融資を受ける際に重要な自己資金を用意するためには法人設立を行い、低い税率で会社に内部留保を蓄えて物件を買い進めていくほうが資産拡大には有利となります。
不動産投資を法人化した場合のデメリット
法人成りに関するデメリットも考えてみましょう。
最もデメリットと思われるものは法人の維持費用です。
法人の申告となると個人の確定申告よりも難易度がぐっと上がります。そのため多く方が税理士へ依頼します。
相場としては売上高や依頼内容によりますが、年一決算で安くて15万円~、顧問契約を結ぶ場合には年間で35万円~といったところになります。
また、利益が出ても出なくてもかかる均等割りが7万円かかります。
つまり、トータルで法人の年間維持コストは25~45万円の負担が生じます。
如何だったでしょうか?
個人的にはメリットのほうがデメリットを上回っているため、不動産投資に限っては法人成りを進めるケースが多いです。
ただし、個人の状況により有利不利の判断は異なりますので、慎重に判断しましょう。