2023年12月03日
飲食店といっても店舗で提供する形態からデリバリまで幅広いですが、今回の調査事例はデリバリーを専門としている個人事業主へのものです。
飲食店への税務調査は無予告調査が比較的多いとされていますが、本件は通常通り、事前通知がされた後に臨場調査という通常の流れでした。
※事案は匿名かつ概略のみとし、事実関係を一部変更したうえ、ご本人の承諾を頂きご紹介しています。
ご相談の経緯
ご相談者の方は都心の飲食店で修行した後10年ほど前に独立をされ、デリバリー専門の飲食店を個人事業として行ってきました。(以下Aさんとします)
毎日数百食を作ることから朝は早く、夜は仕込みで遅くまで仕事をする中で、事務作業はおざなりになり、何年もいい加減な申告をしていました。
そんな中、税務調査の連絡があり、自分では対処が難しいと思い、近所の税理士に相談したところ、対処が難しいと言われ税理士会を紹介され、支部からの連絡で弊所が、税務調査の立ち合いをさせて頂くことになりました。
面談した結果わかった問題点
面談時にご持参頂いた資料
・過去の申告書(白色申告) ただし大半が残っていない状況
面談して分かった問題点
・確定申告の作成がいい加減
・領収書の大半が廃棄されている状況
・売上の大半が現金のため売上の把握が難しく、本人もわかっていない。
・基準期間の売上が1000万円を超えているのに消費税申告がされておらず調査宣言は5年間。(消費税は無申告)
問題点を検討
面談してみて、問題が山積みであることがわかりました。
まず、過去の確定申告書がほとんど残っていないため、当初申告でどんな申告がされているのか不明。
資料もほとんど残っていないため、売上、仕入などの数字の把握が難しい状態でした。このままでは仕入税額控除ができず消費税の納税額だけで1千万円を超えるような大変な金額になることを説明しました。
Aさんも事前にネットで情報収集をしていたようで理解しているようでした。
担当調査官には事前に状況説明をしたうえで調査まで1か月ほど待っていただき、1か月かけて、過去の確定申告書と可能な限り資料を収集してもらいました。
税務調査
臨場日には男性の調査官1人(上席)が来ました。
調査当日は10時から始まり、事業内容などの一般的な質問から消費税が無申告であった理由などが尋ねられました。
そして過去の資料がある程度揃ってはいたものの一部推計で計算せざるを得ない部分があったため、調査の争点はおのずと推計の方法の話となりました。
また、調査官からは書類の破棄・帳簿作成義務違反であるため重加算税及び7年遡及かつ消費税の仕入税額控除は認められないと厳しいことも言われました。
調査当日は16時に終わりました。
調査結果
本件は調査連絡が8月上旬にきてから終了したのが12月上旬と4か月ほど時間がかかりました。(調査前1か月。臨場調査後3か月)
推計課税とはなったものの調査後にも追加資料を提出し、消費税の仕入税額控除も多くの部分で認めてもらいました。
加算税についても、意図的に書類を廃棄したわけではないことを説明し、今後はまじめに帳簿作成を行うことを約束したうえで重加算税・7年遡及とはなりませんでした。
納税額としては決して少ない金額ではありませんでしたが、何とか手持ちの資金で支払いが可能な額となり、ほっとした事案となりました。
資料が全くない状況での税務調査は大変なことになる。商売をしている人は日頃から資料の保存、帳簿の作成は必須です。