売上が1000万円を超えると消費税を納める義務が発生する。と個人事業主の方であればどこかで聞いたことがあるかと思います。
当事務所でも確定申告のご依頼を頂く際、消費税申告が発生する時点からというものが比較的多い気がします。
そこで、今回は初めて消費税の申告を行う方向けにざっくり消費税の仕組み及び注意点を確認してみたいと思います。
※ 記事はおよそ5分で読めます。
まずはざっくり消費税の仕組みを理解しよう。
弊所では、はじめて消費税の申告義務が発生した方からよくご相談を頂きます。
初めてということもあり、何から質問して良いか分からない状態でご相談にいらっしゃいますが、疑問点としては以下の3点かと思います。
①自分は申告義務があるのか?
②どのように計算すれば良いのか?
③届出書(手続き)について
消費税について理解しようと考える場合、上記3つをきちんと理解できれば、ほぼ消費税の基本について理解出来たものと考えてよいと思います。
※以下では、ざっくりした理解が進むよう一般的なケースのみを想定し、還付を起こすための課税事業者の選択等は想定していません。
ポイント1 果たして自分は消費税申告義務はあるのか?
- 基準期間(2年前)の課税売上高
消費税の納税義務を判定するためには基準期間(個人の場合だと2年前)の課税売上高が1000万円を超えた場合には消費税の申告納税義務が発生します。
基準期間における課税売上高により判定されるため、課税売上が1000万円超となっている年度においても消費税の納税義務はないといった年度もあるため注意が必要です。
- 特定期間における課税売上高
基準期間の課税売上高が1000万円超となっていなくても例外があります。
それが特定期間のおける課税売上が1000万円超となるかどうかです。
特定期間とは個人事業主の場合はその年の前年の1月1日から6月30日のことをいいます。
ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかによって判定する代わりに、特定期間の給与等の支払額が1,000万円を超えるかどうかで判定することもできます。
- まとめ
個人事業主が消費税申告が必要かどうかは以下のように考えるとスムーズです。
① 前々年の課税売上高が1000万円を超えているか? ⇒超えていれば申告納税が必要
② 前年の1月~6月の課税売上高又は支払った給与合計のうち低いほうの金額が1000万円を超えているか? ⇒超えていれば申告納税が必要
ポイント2 消費税の計算方法に関する仕組み(原則課税方式と簡易課税方式)
消費税の計算方法は大きく大別すると2つあります。
計算方法を上手に選択することにより大きく節税が可能な場合もあり、しっかり理解したいポイントです。
- 原則課税方式
何も届出を出していない場合には、原則課税方式により計算することになります。
原則課税方式の計算方法は大枠は次の通りです。
課税売上に係る消費税 - 経費等に係る消費税 = 消費税の納税額
つまり、貰った消費税から支払った消費税を引いて残った分を納めるわけです。
- 簡易課税方式
以下のような条件を満たしている場合に簡易課税方式を利用することになります。
① 前年度までに簡易課税選択届出書を提出している。
② 2年前の課税売上高が5000万円以下である。
簡易課税方式の計算方法の大枠は次の通りです。
課税売上に係る消費税 - みなし仕入率により計算した消費税 = 消費税の納税額
原則課税方式との大きな違いは、実際の経費等に係る消費税の代わりに『みなし仕入率により計算した消費税』を控除対象としているところです。
みなし仕入率により計算した消費税とは『課税売上に係る消費税*みなし仕入率』により計算することになります。『みなし仕入率』は業種により異なっており、90%~40%までの10%刻みで6段階存在します。
(簡易課税制度の事業区分:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6509.htm)
ポイント3 届出書について
消費税については期限内に届出書が出されているかが非常に重要となってきます。
初めて消費税の申告をされる方は、以下の3つの届出書の意味と期限をしっかり把握しておく必要があります。届出書1枚で時には数百万円の納税額の差も出てきますので注意が必要です。
消費税課税事業者届出書
消費税の課税事業者となったときに提出する届出書です。
期限などは特に設けられていないため、遅滞なく管轄の税務署へ提出すればよいものです。
課税事業者選択届出書
免税事業者があえて課税事業者を選択する場合に提出する届出書。
還付が予測される場合には適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に提出する必要があります。ただし、選択届出書を提出すると免税事業者に戻れない期間もあるため、慎重に検討する必要があります。
簡易課税選択届出書
簡易課税制度を選択する場合に提出する届出書。
みなし仕入率により計算したほうが有利と思われる場合には簡易課税制度を選択します。提出期限は適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に行う必要があります。ただし、選択届出書を提出すると原則課税方式に戻れない期間もあるため、慎重に提出を検討する必要があります。
よくある質問と注意点
以下では、個人事業主の方で初めて消費税申告を行う必要が生じた方から頂いた質問事項や疑問に思うであろうことをよくある質問として記載しました。
申告期限と納付期限はいつからいつまで?
通常は所得税の確定申告と一緒に消費税の申告も行ってしまうことが多いと思います。
ただ、消費税の申告がどうしても間に合わない場合、個人事業主の所得税の確定申告期限は3月15日ですが、消費税の申告期限は3月末日までとなっています。
課税売上高とは?
課税売上高とは、消費税がかかる売上高のことです。
基準期間が免税事業者であった場合には消費税を含んだ収入金額が課税売上高に該当します。
基準期間が納税義務者である場合には税抜き収入金額が課税売上高に該当します。
事業用の固定資産を売却した場合の受け取った消費税は?
個人事業者の消費税申告の際にうっかりミスしてしまうポイントです。
例えば、事業用のトラックなどを売却した場合、トラックの売却自体は事業所得とはならず、譲渡所得(総合)に該当することになります。所得税法上は、事業所得ではないですが、消費税の計算上は、この譲渡収入に関しても課税売上として計算に含めることになります。
口座振替の場合の注意点
意外に盲点となっている点が口座振替を選択している場合です。
所得税の納税について振替納税を選択している方が多くいらっしゃいます。
この振替納税を選択する際に消費税について、振替納税の対象としていない場合には、所得税は振替納税となりますが、当然ながら消費税は振替納税になりません。
この場合には、納付税額の金額によっては延滞税が課せられるため、注意が必要です。
振替納税を選択している方は、振替納税依頼書について提出時の控えを再度確認するか、税務署へ問い合わせを行うことが肝要です。
消費税の延納
所得税や贈与税については延納が認められているため、消費税についても延納が認められると考えている方が多くいます。しかし、消費税は預かっているものであるという前提から延納制度はありません。納税資金をしっかり確保しておくことが重要です。