建設業に関係する税務税務調査

建設業の税務調査で人工代の領収書が問題に?現金支払いは要注意。

建設業で人工出しというと1日いくらで作業員を集め、現場に送っている場合をいいます。人手不足が常態化している建設業では良し悪しは別としてニーズが多くあるようです。

しかし、人工出しは請負ではなく、労働者の派遣という位置づけになってしまうため、労働者派遣法に抵触し、法律違反となってしまう場合があります。

建設業ではこのことは広く知れ渡っているため、実質は人工出しに近いものでも外注先として作業単位での業務依頼を行ったような請求書や領収書となっている場合が多いようです。

この人工出しに関する人工代は法律上の問題もさることながら税務調査でも問題になることがあります。

以下では税務調査でどのような問題点を指摘されるかをご紹介します。

外注費か給与かの問題

外注費か給与かの問題は建設業だけの問題ではありませんが、常用人工として同じ人に依頼しているケースではその人工代が請負か、給与かが非常にあいまいになってくるため注意が必要です。

仮に給与として認定されてしまうと源泉徴収義務の問題や消費税の仕入税額控除への問題につながってしまい、多額の税負担が発生します。

※外注費か給与かの判断は税務調査では総合的に判断されます。

参考ブログ:従業員を外注先に変更させるための注意点

近年では労働力の確保として消費税の軽減や社会保険負担の軽減のため、従業員としてではなく、外注先として採用するケースがありますが、給与として認定されないためにも最低限、契約書や業務内容などを精査しておく必要あります。

実際の税務調査でも外注費か給与かの認定は重点チェック事項です。

過去の調査では、外注先であるにも関わらず、「うちの若いもの」とか「給与」などと調査中に何度も調査官にいってしまい、そこから問題になったケースがありました。外注先であると認識している場合には誤解を生むような回答は控えたほうが良いでしょう。

領収書の問題

人工出しに近い形で業務を受けていると依頼できる外注先を確保しておく必要があります。

業務を受けてくれる外注先が元々の知り合いなどであれば身元の確認が取れるため問題ありませんが、そうでない場合にはしっかり名前や住所などは確認を行っておく必要があります。

実際の税務調査では、外注先への支払いが本当に行われていたのか?支払われた人は確定申告をしっかり行っているのか?という両方の側面から、支払先の情報も集めています。

特に現金支払いの場合には証明するものが領収書しかなく、外注先が記載した領収書の名前や住所が本当であればよいのですが、デタラメであった場合には必要経費として認められず、さらに消費税の帳簿保存義務違反になり、多額の消費税を納付する可能性も出てきてしまうため注意が必要です。(現金払いのものは自分で領収書を作成して経費算入されている場合(架空経費)も多いため、税務署も最重点チェック項目としています。)

口座振り込みの場合には個人特定ができるため問題になることは少ないとは思いますが、現金払いの場合には最低限個人特定ができるように免許証のコピーなどは保存しておくほうがよいでしょう。

過去に立ち会いを行った調査では3年間で数十人の外注を使っていた個人事業主について外注費が大問題になったことがありました。

理由は数十人の外注先のうち、確定申告を行っていた外注先がわずか数人だけで他の外注先は名前や住所で検索しても該当者がいなかったためでした。

税務調査では支払先が特定できなければ、調査が終わることはなく領収書、電話番号、ラインID、携帯やPCデータの復元、取引先の反面まであらゆる手段で確認調査がされます。

参考:裁決事例:(平成6年12月12日裁決)

絵画美術品の仕入先元帳等に記載された取引の相手方の氏名又は名称について、その氏名又は名称が虚偽のものと推定されるとして、消費税の仕入税額控除を適用することはできないとした事例審判所の判断は、次のとおりである。

1 仕入税額控除に関する消費税法第30条第1項の規定が適用されるためには、保存されている帳簿又は請求書等に、真実の課税仕入れの相手方の氏名又は名称が記載されていることを要し、ただ単に課税仕入れの相手方ないし書類作成者の氏名又は名称として何らかの氏名又は名称と覚しきものが形式的に記載されていれば足りるというものではないことは、明らかである。
 もっとも、取引の相手側に立って交渉その他の取引に関連する行為を実際に行う者が、相手方本人なのか、その代理人にすぎないのかが判然としない場合もあり、かかる場合でやむを得ないときにおいては、取引の相手側に立って実際に行動する者の氏名又は名称の記載をもって、要件を満たすものと解し得ると認められる。

2 消費税第30条第1項の適用除外事由である法定の要件を具備した帳簿又は請求書等を保存していない事実については、事業者側が、まず、帳簿又は請求書等に課税仕入れの相手方の氏名又は名称として記載されているものが、真実の相手方のそれであることを、相当の根拠、資料に基づいて明らかにする必要があり事業者がこれを果たさない場合には、当該課税仕入れにつき法定の要件を具備した帳簿又は請求書を保存していないことが、事実上推認されるというべきである。

省略(3-7)

8  そうすると、請求人は、当該事業を営む上で社会通念上要求されるところの相当の注意の範囲で、相手方の氏名等が必ずしも真正なものでないことを認識していたにもかかわらず、本件持込人等が記載等した氏名等を仕入先元帳に記載し調査担当職員の要求にもかかわらず本件持込人等の氏名等を記載した手帳を提示せず、かつ、相手方の氏名又は名称は虚偽と認定されるのであるから、当該氏名等は、消費税法第30条第8項第1号イ又は同条第9項第1号イの「氏名又は名称」ということはできない。
 したがって、同条第7項の「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当し、同条第1項の規定による仕入税額控除を適用することはできない。

9 請求人は、仕入先の真正な氏名の記載がないことをもって、当該仕入れを否定することはできないと主張するが、上記判断は、本件仕入先元帳等が消費税法第30条第7項ないし第9項の帳簿又は請求書等に該当しないと判断したものであり、当該仕入れが同条第1項の課税仕入れに当たらないと判断したものではない。たとえ、同条第1項の課税仕入れに当たっても、同条第7項の要件を満たさなければ仕入税額控除はできない。
 しかし、たとえ帳簿等に記載された相手方の氏名等が虚偽の場合であっても、当該事業者がこれを真正と信ずべき相当な理由があり、そのため当該帳簿等が消費税法第30条第7項の帳簿又は請求書等として保存されていると認められる場合には、同条第1項の仕入税額控除は適用される。

(国税不服審判所HPより)

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