決算書の重要性は度々ブログで紹介してきましたが、建設業においては更にその重要性が増します。
建設業における決算書についてはサービス業などと比べて少し特殊なこともあり他士業や金融機関から相談を受けことがあります。
そこで、今回は建設業に関する決算書についての注意点を確認したいと思います。
相談者:A社長 個人事業主から法人成り。現在4期目。直近の売上は約4000万円。資本金10万円
他税理士と顧問契約をしていたが、担当者が若く建設業にも詳しくないため信用金庫の担当者へ相談。
ご紹介により弊所へ相談来所。
融資を申し込んだご縁で、不安に思っていた税理士事務所のことを相談したところ、Jさんよりご紹介を頂きました。
本日はよろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願い致します。
Jさんからは決算書についてアドバイスをしてほしいと連絡がありました。
今日は決算書はお持ちですか?
はい。
過去2期分をもってきました。
気になることや改善点などがあれば教えてください。
承知しました。
拝見します・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。
細かな点については実際に中身が分かるわけではないので表面的なことだけでお話ししますね。
私が気になったのは以下の3点です。
①資本金の額や純資産について
②勘定科目について
③製造(完成)原価報告書がないこと
まずは資本金についてですが、なぜ10万円としたんでしょうか?
はい。会社設立の際、資本金は会社のものになってしまうと言われたため、それならば極力少ないほうが良いと思い10万円としました。
何か問題があるのでしょうか?
問題があるわけではありませんが、資本金の額が少ないと見栄えの問題はあると思います。
新規で取引を始めようと相手の会社の信用調査のため全部事項証明書をとってみたら資本金10万円となっていたら少し不安になる人はいると思います。
また、資本金10万円の場合、すぐに債務超過になってしまうため資金調達面でも厳しい場合があると思います。
建設業に融資は付きものなのでこのことは意外に重要です。
確かにJさんからも債務超過の話は伺いました。
Jさんからは私個人のお金に少し余裕があるのなら増資も検討すべきだと言われてしまいました。
それも一つの方法ですね。
あと勘定科目と製造(完成)原価報告書についても建設業仕様に直されたほうがよいと思います。
建設業は科目や計算書が他の業種と異なるのですか?
はい。
例えば、会計上の勘定科目は
売掛金 ⇒ 完成工事未収入金
仕掛品 ⇒ 未成工事支出金
買掛金 ⇒ 工事未払金
前受金 ⇒ 未成工事受入金
など名称が異なります。
頂いた決算書は建設業特有の勘定科目を利用していません。
また、製造(完成)原価報告書という書類も作成する必要があります。
これらは建設業の許認可に関しても関係することとなるため、
今から直していったほうがよろしいかと思います。
なるほど・・・・。
建設業の許認可については、元請からも出来れば取ってほしいと言われています。
そのため許認可については自分でも色々調べており、経営管理責任者、専任技術者の要件はパスできそうなのですが・・・・・。
財務内容の充実は許認可や経審などにも影響します。
また、融資や新規取引にも影響することがあります。
実際に材料仕入を行う際、債務超過であることを理由に現金取引又は保証金の範囲内での取引のみ、掛け取引はNGとされてしまっている会社もあったりします。
このことはしっかり意識したうえで決算を行うことが重要です。
決算前になるとついつい目先の税金に気を取られてしまいますが、会社の財務内容の充実がいかに重要か分かりました。
会計についても勘定科目の整備や製造(完成)原価報告書の作成も今期からやっていきたいと思います。
決算書は一年に一度しか作成されないものですから、しっかり決算に向き合い、
自分の会社にとってどのような決算が望ましいのかをよく考えたうえで決算作業を行ってみてください。