不動産賃貸業・投資の税務

アパート建て替え中の固定資産税の取り扱い

固定資産税や都市計画税は身近な税金であるにも関わらず、申告納税方式である法人税、所得税、消費税などと違い賦課課税方式が採用されているため、意外にも詳しい専門家が少なく間違いが放置されやすい税目の一つです。

今回はうっかり忘れてしまうアパートの建て替え時に検討しておくべき固定資産税について、実際にお客様と打ち合わせした内容を会話形式でご紹介します。

※守秘義務の関係上一部事実関係を変えています。

相談者:Sさん

打合せ内容:建て替えを検討しているアパートについて、土地の固定資産税等は建替中であっても住宅用地の特例適用はあるのか?

また、建築期間は少し長くなる見込みだがその間の固定資産税等は不動産所得を計算する際の必要経費に算入させることは出来るのか?

Sさん
Sさん

所有するアパートですが、老朽化してしまい修繕も追いつかなくなってきているので今後のことを考え、資材高騰で建築コストも上がっている中ですが取り壊しをして新しいアパート(居住用)を建てることにしました。

付き合いがある金融機関からも融資には前向きな回答を頂ているので資金面でも問題ありません。変動金利か固定金利かは今後の金利動向を見極めながら最終ジャッジをしたいと思っています。

ひらい
ひらい

そうですか。再建築までのスケジュールなどは決まったのですか?

Sさん
Sさん

ある程度は決まっています。

ただ、いまアパートを借りて頂いている方の退去時期によって取り壊しのスケジュールも検討していくことになります。

ところで、以前のようにアパート建築による消費税還付は受けられないことは改正があり知っていますが、アパート敷地の固定資産税の扱いはどのようなことになりますか?

前回の再建築の際、建築期間が長かったこともあり、土地の固定資産税が多額になりビックリした記憶があります。

ひらい
ひらい

ご存じの通り、固定資産税の住宅用地の特例措置は1月1日時点で住宅が建っている場合に適用される特例ですが、建替え中の土地についても一定の要件を満たした場合には適用があります。

要件としては以下の通りです。

①前年の賦課日において住宅用地であること

②賦課日(1/1)において「新築住宅工事に着手」又は「建築確認申請書が受領されておりかつその年の3月末までに住宅の新築工事に着手」

③同一敷地で建替えがされていること

④建替前の住宅所有者と同一の者が建替を行っていること

Sさん
Sさん

①③④は問題はありませんが、一番ネックになるのは②ですね。

入居者と業者の都合でいつ取り壊しがされるか今のところ正確には読めないので、年内ギリギリになってしまった場合、住宅工事に着手とはいかなくなってしまいますよね。

ひらい
ひらい

そのあたりは音頭をとる建築会社と打ち合わせをしておく必要がありますね。

Sさん
Sさん

申請案内などは役所からくるのでしょうか?

あとパンフレットの情報では住宅を取り壊した翌年の1/31が提出期限とありますが建築確認申請書などが用意できるか不安ですね。

ひらい
ひらい

役所に確認してみたところ、案内などは全員には送っていないとのことでした。また、提出期限については案内には1/31と記載しているが、期限は厳守というわけではないようなニュアンスでした。ただ、建築確認申請書を提出して住宅用地の特例を認めてもらう場合には3月末までに基礎工事の着手に入ることが必須のため、1月末には書類がそろっているような状態に出来なければそもそも申請は難しいのかも知れません。

Sさん
Sさん

確かにそうですね。

そのあたりの話は業者さんと共有して進めたいと思います。

ところで、もし住宅用地の特例が外れた場合、固定資産税等は3倍~6倍になりますが

この場合の固定資産税は個人の確定申告において必要経費として認めてもらえるのでしょうか?

ひらい
ひらい

個人の確定申告において必要経費になるかどうかは意外に判断が難しく、私が調べてみた限り、判例や裁決でも事案により判断が分かれています。しかし、共通して判断の根拠とされている部分あります。

以下は納税者が負けている判例とはなりますが、判断として重要な部分を一部抜粋してご紹介します。

不動産賃貸業を営む個人の所有する土地で、いまだ貸付けの用に供されていなかった

ものに係る固定資産税等が、その年分における不動産所得を生ずべき業務について生じ

た費用と認められるためには、その者がその主観において当該土地を貸付けの用に供す

る意図を有しているだけでは足りず、当該土地がその形状、種類、性質その他の状況に

照らして、近い将来において確実に貸付けの用に供されるものと考えられるような客観

的な状態にあることを必要とするものと解すべきである。【名裁(所)平26-10】

Sさん
Sさん

法人については土地を所有しているだけで経費になるのに個人は意外に縛りがありますね。

ひらい
ひらい

鋭いですね!

裁決事例でも同じことを納税者が主張したみたいですが、所得税は明確に業務と紐づけられることを要求されてるので負けてしまったようです。

ポイントは判例で示されているように税務署に対して「客観的な状態」を示すことが出来るか?につきますね。

上記の固定資産税の住宅用地の特例と合わせ対応を検討しましょう。

まとめ

・建替中の固定資産税については住宅用地の特例を例外として継続させることが出来る場合がある

・未利用中の土地に関する固定資産税でも客観的に近い将来貸付けの用に供する状態になるのであれば必要経費に算入することが出来る。

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