税理士をしているとお客様から必ずといってよいほど、受ける相談の1つが融資に関するご相談です。
そのため、融資については必要に迫られ、一生懸命勉強することになります。
資金繰りに関する書籍はたくさんあるため、基本的なことは学ぶことが出来ますが、最も勉強になるのは、やはり、その道のプロである銀行員の方たちにぶっちゃけ話を聞いてみることだと思います。
先日、金融機関の担当者の方、弊所職員と3人で融資に関する色々な話をしたためご紹介をしたいと思います。
打合せ相手:某信用金庫職員Kさん 弊所Mさん
打合せ内容:融資についての疑問をぶつけてみた。(融資判断・金利・プロパー融資)
Kさん、いつも弊所顧問先の融資に関する様々な相談にのって頂き有難うございます。
弊所のMさんは新人ながら勉強熱心で融資について興味があるようなので、色々と教えてあげてください。
やはり本職の方のほうが豊富な経験も踏まえたうえでお話し頂けると思いますので。
私の担当先のお客様で資金繰りがあまり良くないところがあり、
何とかお力になれないものかと思っています。
お忙しいところ恐縮ですが本日はよろしくお願いいたします。
こちらこそ、いつも税金に関する相談にのっていただき有難うございます。
私が答えられることであれば何なりと質問してください。
まず、融資については格付により判断されるそうですが、その格付はどのように決まるのでしょうか?
定量分析と定性分析により判断するそうですが・・・・・。
はい、定量分析と定性分析により評価することになっています。
定量分析は決算書3期分から算定され、定性分析は社長さんの人柄や個人財産などにより行われます。
そして格付の一般的判断は定量分析が大部分(7~9割)を占めています。
定性分析は都市銀ではほとんど加味されていないと言われていますが、我々のような信用金庫営業マンは都市銀行や地銀に相手にしてもらえないような中小零細企業に何とか定性分析で加点をして格付をよくして融資をしたいと考えています。
それでは定性分析では加点だけしてマイナスはないのでしょうか?
営業担当としては、融資を実行したいと考えているわけなので定性でマイナスをつけることはめったにありません。
ただ、やはりそこは人間なので、どうしてもこの社長は・・・・・と思う場合もあります。
その際には定性で格付けを1つ落とすような場合もあります。
また上司のほうから格付を1つ落とすように指示されたこともあります。
我々金融機関は人を見て貸すということも教えられますから。
Kさんが・・・・と思う場合ってどんなケースですか?
例えば経営者の方が
・約束を守らない
・時間にルーズ
・本業がそれほど上手くいっていないのに高級車を購入するなどお金使いが荒い。
・言葉づかいが社会人としてなっていない。
・従業員がすぐにやめる。
・仕事に対する姿勢が適当
・連絡が取れない。
など。。。。。
つまりは非常識で社会人失格の人ということですね。
まあ、そんな人はどこに行っても大切にされませんよね・・・・。
そうですね。
あとはやたら金利を安くしろと言われると正直やる気がなくなりますね。
ネットの情報などでメガバンクや地銀の安い金利を提示して、ここはこの金利だぞ!!なんて言われる方がいますが正直、「じゃ、そこでやってもらえば?」って正直思ってしまいますよね。
まあ、利用者としては金利にこだわる気持ちは理解できないわけではありませんが
信金さんにメガや地銀と金利競争させようと考えること自体、金融機関の特徴を理解していない行為といえますからね・・・・。
でも、やはり金利は出来れば相談させてもらいたいですよね(笑)
金利を低く抑える必要があると思うときはどんな場合ですか?
正直、金利の話をされると辛いですね(笑)
金利については本部から採算金利が通知されているので、一つの参考にはしていますが
例えば以下のようなことを加味して金利は検討しています。
①他行の金利動向
②実質金利
やはり、他行さんの動向は非常に気にしています。
もう一つは実質金利ですね。
例えば以下の2つは同じように見えて我々の考えは違います。
①1000万円を1%で融資している先
②1000万円を1%で融資しているが、当行に500万円の預金もある融資先
前者は1%の金利ですが、後者は実質2%の金利が取れています。
そのため、金融機関としては実質的な金利も考慮して金利は検討しています。
なるほど。
預金の預け先を変更することにより、金利交渉も出来るかもしれないということですね。
力でごり押しして金利を安くしろ!!というよりも仕組みを知っていると交渉も有利に運べるということですね。
そうですね。
まあ、実質金利の話をするお客様はそういらっしゃいませんが(笑)
最後に1つ教えてください。
私の担当先で業績はそこそこ良い会社があるのですが保証協会付融資しか提案されません。
社長はプロパー融資についてもチャレンジしたいと話しているのですが、プロパー融資はハードルが高いのでしょうか?
また、答えにくい質問ですね(笑)
おっしゃる通り、プロパー融資は保証協会の責任共有制度の対象外となるため、金融機関としては全面的にリスクを負うことになりハードルが高くなります。
そしてプロパー融資を行うかどうかは財務内容が重要となります。
先ほど格付の話をしましたが、当行では格付のランクを11ランクに区分(正常先6・要注意先・要管理先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先)しており、正常先の下から2つ目以上であればプロパー融資を検討するといった内部基準があったりします。
他の金融機関のことはわかりませんが、格付は旧金融検査マニュアルの債務者区分とある程度リンクしているはずですので格付に関する判断基準は似ていると思います。
金融検査マニュアルが廃止されてから結構時間がたちますが、
金融機関の判断はなかなか事業性評価による融資判断とはならないですね。
私も事業性評価による融資に興味があり、ローカルベンチマークの利用にチャレンジしたことがありますが、作成に苦慮したわりにどの程度有効性があるのか判断しづらい面がありました。
そうですね。
一般的な融資は従来通りのやり方から脱却できていないところは否めません。
事業性評価は会社のことをしっかり理解したうえでの目利きが重要ですが、正直、営業担当としては1社あたりにそれほど時間をかけている時間がないといったところかと思います。
なるほど。
今日は色々と答えずらい質問をさせて頂き有難うございました。
また、色々と教えてください。
【まとめ】
・金融機関の融資判断 定量分析(決算書)により判断の大半は行われる。
・金利交渉をしたいのであれば、金融機関の数と実質金利に注意
・プロパー融資は格付により決まる。