役員借入金についてのご質問
実務上、「役員借入金」という科目は本当によく見ます。
感覚としては中小企業の3社に2社はあるイメージです。
役員借入金が少額であれば便利な勘定ですが、この金額が数千万円もあるような会社では取り扱いに困るケースも出てきます。
役員借入金については以下のような質問を受けます。
- 会社にお金が無くなったときに個人からお金を貸しても良いか?
- 会社へお金を貸し付ける際は金銭消費貸借契約書を作成しておくべきか?
- 利息はとるべきか?
- 利息をとらないと利益を計上する必要があるのか?
- 役員借入金で債務超過になってしまっている場合、金融機関からどのようにみられるのか?
- 返ってくる保証がない会社への貸付は相続が発生した場合には財産として計上する必要があるのか?
- 役員借入金を債務免除した場合にはどのような問題が発生する可能性があるのか?
- 役員借入金を減らしていくにはどのような方法がとられているのか? などなど。
以下では役員借入金の取り扱いについて、なぜ、問題となるのか?解決策は?といった疑問について会話形式にてご紹介します。
役員借入金に関するご相談
相談者:A社長(60代)
相談者の状況:30年以上会社を経営。後継者は長男。株主構成は社長70%と長男30%。
会社の状況:一時期、会社経営が苦しかったこともあり、多額の役員借入金がまだ未回収の状況。
うちの財務諸表には事業資金が苦しくなったときに私が会社に貸したお金が多額に計上されています。この借入金により債務超過の状態となってしまっており、今後金融機関から融資を受ける際に問題にならないか心配です。
また、融資以外でも役員借入金が今後どのような影響をもたらすのかわからず心配です。
まず、ご質問の1つ目について返答します。
役員借入金が多額になっており、財務諸表上、債務超過になってしまっている会社があります。
一般的には債務超過となっている企業に金融機関は融資をしたがりません。
しかし、役員借入金で債務調査になっている場合には金融機関サイドでは資本と見なして財務格付を行っているようです。そのため、融資に際しては金融機関の担当者へしっかり説明すればよろしいかと思います。
次に融資以外で影響するか?についてですが、相続の際に財産として計上する必要があります。
通常、役員借入金が多額にある会社は業績があまりよくありません。
将来返ってくるかも分からない役員借入金に対してい多額の相続税を支払う可能性があるんです。
なるほど、債務超過となっているにも関わらず金融機関が今まで融資をしてくれていた理由が分かったような気がします。
ただ、私が会社へ貸し付けたお金に対して相続税がかかるとは思ってもみませんでした。
自分の会社が赤字のときにお金が足りず仕方なく出したお金なので無い物と考えている経営者が多いです。しかし、法律上は個人と法人は別人格のため、財産価値があると考えられてしまうんです。
このままでは子供たちに影響が出てしまいますね。
何か方法はありますか?
対応策としては以下のような方法が考えられます。
①今後は役員借入を増加させず、役員報酬を減額しながら少しづつ返済
②後継者へ債権を贈与
③欠損金があるようなときは債務免除
④借入金を原資として増資をかける(DESや疑似DES)
なるほど、①②は良くわかりますが③④はどのような効果があるのでしょうか?
それでは順番に説明いたします。
まず③についてです。
会社にお金を貸している社長は会社に対して債権を保有している状態です。
そこで、もうお金は返さなくてよい。と宣言するわけです。
すると会社は社長へお金を返さなくよくなるわけなので、その分儲かった!!となるわけです。
この場合、会社では通常は雑収入(債務免除益)に計上し、法人税等が課されますが、欠損金が見合うだけあれば課税が起きないわけです。
ただし、株主が整理されていないと場合によっては既存の株主に利益をもたらしたものと見なされ「みなし贈与」に該当する可能性もあるため注意しましょう。
DESや疑似DESとは借入金を資本金へ振り替えることにより社長が会社に貸しているお金を会社の株式へ変えてしまう手法です。この方法により財産の圧縮効果が期待できます。
しかし、DES後に会社の業績が大幅に上昇することにより株価が上昇した場合などは相続財産が増加するなんてことも考えられますので慎重に判断したいところです。
また、株主が整理されていない場合に有利発行などをしてしまうと「みなし贈与」の危険もあいますので実行する際はしっかりシミュレーションをすることをお勧めします。
色々複雑そうですね。
実行に当たっては会社の株主や株価についても考えておく必要があるわけですね。
私一人ではとてもできそうにもありませんので実行する際はアドバイスをお願いします。
承知いたしました。
どの方法が良いか一緒に考えていきましょう。