親が所有している不動産を子が譲りうける場合の疑問点
相続税対策や管理上の問題などから親が所有している不動産を子が親の生前に譲り受けたいというお話は本当によくあるご相談の1つです。
ただし、皆さん考えることはそれぞれのようで、以下のような疑問点があるようです。
- 不動産を譲り渡す方法は贈与が良いのか?譲渡が良いのか?
- 不動産を贈与で譲る場合にはどのくらい贈与税がかかるのか?
- 贈与で行う場合、相続時精算課税を利用すべきなのか?
- 贈与で行う場合にはどのような手続きをすればよいのか?
- 譲渡で行う場合にはいくらで売買すべきか?
- 所有している不動産がアパートなのだが贈与を行う際の注意点は?
- 所有している不動産がアパートなのだが建物のみを贈与することは可能か?
- 建物のみを贈与した後の地代はどうすればよいのか?
- 所有する物件の一部を贈与することは可能か? などなど。
ざっと思い出しただけでも実に様々な質問を受けています。
その中で弊所がお手伝いすることが多い事案は親が所有しているアパートを子供へ贈与するケースです。
以下では贈与するにあたりどのような話をお客様としているかを対話形式でご紹介します。
相談事例
ご相談事項
Aさん(母)が所有するアパートを相続税対策も兼ねて一人息子のBさん(長男)へ譲りたい
移転したい物件
アパート(土地・建物)土地の評価額2000万円(路線価ベース) 建物評価310万円 借入なし・預かり敷金なし
夫が他界したときにある程度まとまった財産をもらいましたが、それほど贅沢な暮らしをしているわけでもなく、あまりお金も使わないため、私が所有するアパートの1つを長男に譲りたいと思っています。
ただ、初めてのことなのでどのように行えば良いのか分かりません。
移転する方法や注意点などはありますか?
物件を移転する場合には贈与と譲渡の2つの方法があります。お母さまのご意向としては贈与ということで良いでしょうか?
はい。
息子は会社勤めをしており、孫もまだ小さいのでお金がかかる年代です。
その息子からお金をもらうことは考えていません。
承知しました。それでは贈与という前提でお話し致します。
アパートの贈与というと全部を贈与するか、それとも建物のみを贈与するかを選択する必要があります。
出来ればアパート全部を贈与したいと思っていますが贈与税が心配です。
母と話して贈与してくれるのは有難いけど、贈与税がいくらかかるかわからないので税理士さんに聞いてみようという話になったんです。
建物だけであれば贈与税も少なくて済みそうですか?
そうですね。
ご相談いただいているアパートすべて(土地・建物)を贈与した場合、725万円の贈与税が発生します。
この贈与税は不動産をもらうBさんが支払うことになりますので負担が非常に重くなってしまいます。
建物だけであれば20万円の贈与税で済みます。
そんなに違うんですか!?
贈与してもらった後はアパートの収入が入るにしても、725万円の贈与税の支払いは厳しいです。建物だけを贈与する方向性で考えたいです。
承知しました。それでは建物の贈与だけを行う方向で検討していきましよう。
この場合、贈与実行後はお母様の土地のうえにBさんの建物が建っていることになります。
地代についてはゼロ又は使用貸借の対価として固定資産税相当の支払いをBさんからお母さんに対して行うことは良いですが、賃貸借とならないように気を付けてください。
また、再度確認ですが、現在貸している先から敷金や保証金は預かっていませんね?また、ローンの残債もないですね。
古いアパートなので敷金をゼロで募集しています。
もう一度確かめてみますが何か関係があるのでしょうか?
はい。アパートの贈与とセットで借入や預かり敷金を負担する場合、税金の世界では「負担付き贈与」というものに該当してきます。
そのため、敷金や保証金を預かっている場合には敷金・保証印分の金銭贈与なども検討することにより「負担付贈与」を回避させる必要がでてくるんです。
何だか色々と複雑なんですね。
でも母や言うように古いアパートなのでローンの残債や敷金を預かっていることはないと思います。ただ、心配なので自宅に帰った後に母と一緒に契約書などを再度確認したいと思います。
そうですね。
「負担付贈与」に該当すると手続きも再検討する必要がありますので再度契約書等を確認したうえで移転手続きをしたほうが良いと思います。